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東京高等裁判所 昭和55年(ラ)1111号 決定

抗告人

和田臣睦

右代理人

瀧内禮作

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一抗告人代理人は、「原決定を取消す。」との裁判を求め、その抗告の理由は別紙〈省略〉のとおりである。

そこで、審按するに、記録によれば、本件不動産競売手続は、原裁判所において、昭和五五年四月一一日競売開始決定がなされ、競売期日は、第一回が同年五月二八日午前一〇時、第二回が同年六月二五日午前一〇時、第三回が同年七月二三日午前一〇時とそれぞれ指定されたが、いずれも債権者代理人の延期申請により延期されたこと、しかして原裁判所は同年九月二四日午前一〇時に第四回目の競売期日を指定したが、債権者代理人の期日延期申請がなされたこと、しかし、原裁判所は同申請を許さずに同期日に競売を実施し、同月二六日最高価競買人大原興業株式会社に対し競落を許可する旨の決定をしたことが認められる。

ところで、民事執行法施行前の競売法においては、競売の延期を許す旨の規定はなく、競売期日は裁判所が職権で定めるものであるから(同法二七条)、裁判所が職権で一旦指定した競売期日を変更することは可能であるが、債権者または債権者及び債務者の合意による競売期日の変更申請があつても、裁判所が右申請に基づき競売期日を延期しなければならないものではない。したがつて、原裁判所が債権者の第四回の競売延期申請を許さなかつたことは、なんら違法といえない。

抗告人は、不動産競売手続については、債権者、債務者の申請がある限り無制限にこれを延期する取扱が永年に亘つて行われてきたのであるから、これを数回に制限する場合は、国民に告知すべきであると主張するが、債権者、債務者の申請がある限り無制限に執行手続を延期するというような競売事件の処理は差押債権者に換価意思のない差押を認める結果となり、執行の本質に反するものというべきであるから、到底許されるものではなく、また、延期を許すかどうかは裁判所の職権判断に属する事柄であるから、これを予め公にすべきものではない。また、職権によつて精査しても、原決定にはなんら違法の点は見出せない。

(渡辺忠之 糟谷忠男 渡辺剛男)

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